スマホは現在地はどうやって特定されるのか

はじめに

地図アプリを開くと、青い点 が「今ここにいます」と教えてくれます。

「GPSで見てるんだろうな」と思う方も多いと思います。でも、屋外の空だけ を見ているわけではありません。カフェの中やビルの中でも、だいたい正しい場所にピンが立つ——あれは いくつもの情報を組み合わせた結果 です。

私は、スマホの位置情報を 「衛星が教えてくれている」 とだけ思っていると、設定やズレ方の理解がずれやすい、と感じています。実際には、名前の整理、複数の電波源、スマホ側の計算、そして誤差や歴史まで、いくつかの層が重なっています。

この記事では、GPSとGNSSの違いハイブリッド測位衛星測位の仕組みピンがズレる理由、そして 昔のGPSの意外な歴史 まで、専門用語は最小限にして説明していきます。

目次

  1. GPSとGNSSの違い — 「GPS」は世界の全部ではない
  2. ハイブリッド測位 — スマホはGPSだけではない
  3. GPSの仕組み — 時刻から距離、距離から位置
  4. 誤差の原因 — ピンがズレるのは自然
  5. 小話 — 昔のGPSはわざとズラされていた
  6. まとめ

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1. GPSとGNSSの違い — 「GPS」は世界の全部ではない

まず、名前 から整理しましょう。

私たちは「GPSで位置を取る」「GPSをオンにする」と言いがちです。でも技術的には、GPS(Global Positioning System/グローバル・ポジショニング・システム)は、アメリカ が運用する衛星測位システムの 固有名詞 です。

世界の衛星測位システム全体をまとめて呼ぶ言葉が GNSS(Global Navigation Satellite System/グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム) です。日本語では 全球測位衛星システム と言います。

たとえば、GNSS はコンビニのフライドチキン全体、GPS はファミチキ——代表的で名前が有名なので、どこのフライドチキンもファミチキと呼んでしまう、みたいなイメージです。

スマホは、アメリカのGPSだけではなく、見える衛星を まとめて 使います。これを マルチGNSS と呼びます。

日本にも、自分のシステムがあります。QZSS(Quasi-Zenith Satellite System/クォージー・ゼニス・サテライト・システム)、日本語では 準天頂衛星システム。衛星の愛称が みちびき です。

「GPS」という言葉が、衛星測位 全部 の俗称になっている——これが、まず押さえておきたいポイントです。

1990年代に民間でいちばん先に広く使われたのがアメリカのGPSで、カーナビやスマホの設定画面も「GPS」と表示されることが多かったため、GPSが総称として浸透したのかもしれません。技術記事に「GPS受信」と書いてあっても、実機はマルチGNSSのことがほとんど、というのが今の実情です。


2. ハイブリッド測位 — スマホはGPSだけではない

次に、スマホが現在地を特定する方法 です。

衛星測位は、屋外で空が見える場所ではとても強いです。でも 屋内高層ビル街地下 では、衛星の電波が届きにくくなります。

だからスマホのOSは、複数の情報を組み合わせて「今いる場所」を推定します。これを ハイブリッド測位(複合測位) と呼びます。屋外では衛星、屋内ではWi-Fiや基地局に比重が移る、複眼 のようなイメージです。

ざっくり、こんな情報源があります。

情報源役割得意な場面
GPS(GNSS)衛星から距離を測る屋外
Wi-Fi周辺のアクセスポイントのリストと位置データベースを照合屋内
携帯基地局接続している基地局の位置や電波の強さ屋内〜屋外
気圧センサー階数(高度)の目安ビル内
加速度・ジャイロ歩いた方向や、GPSが切れたあとの補間GPSが途切れたとき

つまり、スマホの位置は、衛星だけを見ているわけではない のです。Wi-Fiの名前のリストや、近くの基地局の情報も使っています。

だから屋内のカフェでも、だいたい正しい場所にピンが立つ。これが、地図アプリの青い点が「なんとなく当たっている」理由のひとつです。


3. GPSの仕組み — 時刻から距離、距離から位置

では、衛星測位そのもの は、どう動いているのか。

GNSSの核心は 三角測量(トリラテレーション) です。ここでは代表として GPS の動きを説明します。他の系統も、基本的な考え方は同じです。

流れ

  1. 衛星が電波に 送信した時刻 を載せて送る
  2. スマホは、受信した時刻との差から 電波が届くまでの時間 を計算する
  3. 光速 × 時間 = 衛星までの距離
  4. 衛星の位置が分かっているので、「その衛星から○○キロの球の表面にいる」と分かる
  5. 球が3つ重なると交点が絞れ、4つ目で高度や時刻のズレも補正できる

要するに、「衛星が今どこにいるか」「電波が何秒かかって届いたか」 が分かれば、中学の数学みたいに位置が計算できる、という仕組みです。衛星を 目印の風船 にして、距離の の交点を探すイメージです。

なぜ「時刻」がそんなに大事か

1マイクロ秒——100万分の1秒——の誤差があるだけで、距離は 約300メートル ズレると言われます。時計が1秒ズレると、距離は 何十万キロ もズレてしまう世界です。

だから衛星には 原子時計 のような、とても正確な時計が載っています。スマホ側の時計はそこまで精密ではないので、実際には 4つ目の衛星 で、位置だけではなく 時刻のズレも一緒に直す のが一般的です。

衛星は位置を「送信」していない

「GPSって、空から位置を送ってくれてるわけじゃないんだ」——そう思った方、正解です。

衛星は 一方向の放送 だけです。誰が受信しているかも知りません。位置の計算は、すべてスマホ側 で行われています。アプリに送られるのは、その 計算結果 です。


4. 誤差の原因 — ピンがズレるのは自然

「じゃあ、なんで地図のピンはズレるの?」——ここも大事です。

位置情報の誤差は、衛星が悪い だけではありません。代表的な原因を挙げます。

原因何が起きるか身近な例
マルチパスビルや車に電波が反射するビル街で道からズレる
電離層・対流圏大気で電波の速度が変わる開けた場所でも数m〜十数m
衛星の配置見えている衛星の角度が悪い谷やトンネル出口
人的ミス座標の入力ミスなど航空機のルート設定ミスなど

電離層・対流圏とは

どちらも、衛星からの電波が大気を通るあいだに少し遅れる ことで誤差になります。スマホは「真空を光速で進んだ」と仮定して距離を計算するので、実際より遠いと判断しやすいのです。

電離層(高度おおよそ60〜1000km)は、太陽の影響で状態が変わります。昼間、太陽活動が盛んなとき、衛星が低い位置にあるときほど、遅れが大きくなりやすいです。

対流圏(地表から約10〜12km)は、私たちのいる天気の層です。湿度が高い日、雨や霧、急な天候変化などで、電波の遅れ方が変わります。海沿いや夏の暑い日は、湿潤分の影響が出やすいこともあります。

ビル街のズレは 反射(マルチパス) が主因になりやすく、晴れた野外の数メートル〜十数メートルは、こうした 大気の影響 が目立ちやすい、と考えると整理しやすいです。

位置情報の誤差は、衛星のせいだけではありません。ビルに反射した電波や、大気の状態の影響を受けたりします。

だから 「ピンが少しズレる」のは、けっこう自然なこと なんです。便利だけど、100%の真理ではない——そう思っておくと、地図アプリとの付き合い方が楽になります。


5. 小話 — 昔のGPSはわざとズラされていた

最後に、ちょっと 歴史の小話 です。

実は 2000年より前 のGPSは、民間向けに わざとズラされていた 時代がありました。民間向けGPSに わざと霧をかけていた ようなものです。

政策の名前は SA(選択的可用性) です。1990年から2000年5月1日まで、アメリカは民間向けの信号に 意図的なノイズ を載せていました。

民間GPSの精度は、おおむね 100メートル前後 に制限されていたんです。軍事用だけ正確で、一般の人には「だいたいの位置」しか教えてくれない設計でした。

ところが 2000年5月2日、日本時間の午前9時頃——ある日を境に、みんなのGPSが 突然かなり正確になった という体験談が、当時のユーザーに残っています。

スマホやカーナビの 設定をいじったわけではない空から送ってくる信号そのもの が変わったんです。クリントン大統領が恒久的な解除を発表し、全世界で同時にSAがオフになりました。

その結果、民間GPSは 数メートル〜十数メートル級 に。カーナビや位置サービスが、一気に実用段階に入っていきます。

「GPSは昔から今と同じ精度だった」——実はそうではない、というのがこの小話です。

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